読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

キイロイ

若手俳優と惑星アイドル

「朗読ミュージカル『あやかしの巻』」8月15日昼公演と夜公演

まず最初に、わたしは朗読劇というものを過去一度しか見たことがなくて、そもそも作り手の前提にある「朗読劇」の本来の形というものがいまいち分かっていない。今回は「朗読ミュージカル」だった。朗読劇をたくさん見てきた人だったら目新しさがあるのかもしれないけれど、わたしは「SEが入ってなんかradio dramaみたいだなぁ」という陳腐な感想が真っ先に浮かんだ。朗読する本は元々が活字のみで楽しむお話であるので、情景描写はかなり細かくされる。そういった効果音的なものも声の芝居で魅せるのが朗読劇ではないのか?と一瞬思ったけど、読み聞かせではないのだからその必要はないのかもしれない。そんなSE、慣れてくるとその驚くほど多彩な音はたくさんの、時に見慣れない楽器から出ていることが分かって釘付けになってしまった。バンドが舞台上にずっといる(本当にずぅっといる)生演奏ならではの面白さ。
其の壱「青行燈の愉悦」。よくある学校の怪談に、新米教師の勇気みたいなエッセンスを入れて良い話風にしましたよ、みたいな、なんか小学校の国語の教科書にでも載ってそうなお話。青行燈が突然歌い出した時、新米教師役の石渡くんが「歌うの?!」とツッコミを入れたのは、「歌う」という行為に自己言及する某ミュに慣れたわたしには親しみやすいミュージカルの世界観だった(そもそもミュージカルであることをすっかり忘れてたので状況を理解するのにめちゃくちゃ時間かかったけど)。また、朗読劇の中でも「歌う」という行為には「不自然さ」があるために、一つ目のお話で観客を世界観に慣れさせるためのセルフツッコミを入れたのかもしれない。新米教師役の石渡くんはスーツ姿、他のキャストは妖怪役もやるせいか(やらなかったりもするし天井に張り付く血まみれの女は幽霊だと思うけど)浴衣姿。このビジュアルというものがなかなかやっかいで、この時青行燈役の方は別に顔はそこそこもいけてない若くもない男の姿だったけれど、きちんと赤いカラコンをつけていた。これが後々尾をひくことに。高校三年生です!ハイキュー出ます!という期待の(?)新人廣野凌太くんは傘の妖怪をやっている時の顔と声が可愛かった。お目目ぱちくりでもキリッとでもないけれど鼻筋が通ってて涙袋がぷっくりってのは今流行りのお顔なのかなとか、それとも単にわたしの好みなだけなのかなとか思った。
其の弐「透明猫」。これは猫や人が透明になった理由が科学的なものだったので妖怪のお話じゃなくって感染症とかパンデミックとかそういう類のお話だと思う。少年役の古谷大和くんは驚いたり落ち込んだり目を輝かせたり多彩な表情が魅力的だった。あと、「これはまったく驚いた」という古風な言い回しが個人的にツボ。台詞回しや単語で時代を読み取るべきなのだけれど、大和くんが猫(?)の描かれたTシャツにチェックのシャツという現代風な衣装だったため時代背景を読み取るのに時間がかかってしまった。石渡くんがスーツだったのだから、いっそ学生服でも着てくれれば良かったのにと思うけれど、朗読劇においてビジュアルというのはどれくらい重視されるものなのだろうか。ビジュアルについては残念ながら最後まで尾をひくことに。お話の最後「猫が消えた、にゃぁご」という不思議な曲と、その曲の最後に意味深に笑う谷くんはダークな世界観でとても良かった。ただお話全体やロクさんのキャラがなかなかチープで、そのダークさがとってつけたようになっていたのが残念。
其の参はバラダン・バロンによるなんだか陽気な音楽の時間。
其の四はイケメンたち()によるなんとも企画倒れなクイズの時間。
其の五「市村座奈落燈」。これは主人公が役者で、メタ的な要素を感じて面白いと思った。劇場入って俳優のブロマイドをいっぱい買ってさっきまでその俳優のクイズ大会(?)を見てた私たちに、命を燃やして芸に生きた男の話を見せるの、おもしろいでしょう?? という余計な話は置いといて、今尚この男を基にしたお話が上演されているという現代への繋がりが面白くて、3本の話の中では一番見応えがあった。この時も1行しかセリフのない大部屋役者とは思えない霜月さんのビジュアルに驚いたけれど、小磯一斉さんはだんだん白髪の老爺に見えてきたので、朗読劇は私たちや制作側が思っている以上に難しいものなのかもしれない。

今回は残念ながら選出された演目があまりわたしの好みでなかったけれど、EDのように歌われる曲はお話の世界観に合ったキャッチーなもので、朗読ミュージカルもなかなかおもしろいかもと思った。それと同時に、前回の「RO-DOKU音戯草子KOIBUMI」や今回の「朗読ミュージカルあやかしの巻」で見られた若い演出家の方々が試行錯誤して革新を与えようとしている「朗読劇」本来の形について、少し勉強してみても良いかもとも思った。
もし次があるなら、ようかいじゃなくってもいいけど、音楽はバラダン・バロンが良いです。朗読劇じゃなくって、演劇でも良いです。