キイロイ

ホシノつくヒト

インスピッ!!第四回公演『BGにつぐ!』9月7日・9日・11日16時

とても気持ちの良いコメディ作品だった。
主人公のショウゴが宝クジで100万円を当ててから、和気藹々に見えた劇団員の様子がおかしくなる。常に頭をよぎるのは「お金は人を変えてしまう」というオーナーの一言。ショーゴの視線で見る前半は、挙動不審な劇団員に不信感を募らせ、いつの間にかショウゴと一緒に劇団員を警戒し疑っていた。その怪しい雰囲気は2015年1月の『CHaCK-UP狙われた惑星』を思い出す。そういえばあの舞台も初日、ショーゴ役古谷大和くんにそっくりな天宮王成と一緒に仲間であるはずのCHaCK-UPを怖がっていたりしたな…
しかし物語中盤、座長の「俺は今1000万円持っている」というナレーションで舞台は一変する。いや、反転する。この場面転換時の機械音なBGMとそれに合わせた機械的な動きがかっこよくって楽しい。見えないはずの姿を魅せる、舞台らしくて単純に好きだぁ!と思った。反転した舞台上で同じ場面がもう一度繰り返される、今度は劇団員たちの視線で。挙動不審だった劇団員のその"ワケ"が明かされた時、必要以上に警戒し怖がるショウゴがかえって滑稽に見えた。同じ場面なのに見え方が違うだけでこんなに可笑しい。いつの間にかショウゴに感情移入して犯人探しをしてしまったことが、まんまと作・演出の亀田真二郎さんの術中にハマったようで悔しいくらいだ。ちょっとした台詞が伏線で、それが解けた時の気持ち良さ。シリアスなシーンが突然ぶち壊されることもおもしろい。
古谷大和くん演じるショウゴはあまりに人間的で、単純馬鹿過ぎるけど聖人君主でもなく、良い意味で分かりやすいキャラだった。日に日に激しくなる顔面崩壊。終いには怒っているのにどこか情けない動物のようで可笑しい。怯える古谷大和くんがその顔立ちからは想像できないほど可愛くなってしまうことを分かってる亀田真二郎さん絶対古谷大和のこと好きだろって100回くらい思った。小磯一斉さん演じる寅川さんは存在がギャグみたいなサトシくんに対して至って本気で対応しているのが可笑しい。サトシくんはすっごい真面目な顔しといて「ごめんなさい、聞いてませんでした。」とか言うせいで、後半台詞なく真面目な顔してるのも聞いてないんだろうな〜と立ってるだけで可笑しかった。弁護士の尾山さんとミーたんやっくんのバカップルは実際には見たことないけどこういう人たちめっちゃいそう!!!!と一周回って感動してた。座長は物語終盤になればなるほど鼻が真っ赤になっていくのが印象的だった。ショウゴは汗ダクで肩のあたりが黄ばんできてたし、そういうとこまで見えちゃうのも、小さい劇場ならではのリアリティーなのかなって思った。
コメディ作品を見ることも少なくないけれど、BGにつぐ!は今までにない戦略的な笑いで、観劇後気持ち良さと悔しさが押し寄せた。5億円の行方とか、少しだけ余白を残してくれるとこも好き。

毎公演後のチェキ会も本当にありがとうございましたって気持ちとお疲れさまでしたって気持ちと。サインをつけてくれる日も一人ずつ丁寧に対応していて公演時間分くらい時間かかってんじゃないかって思った。わたしの今の一推しはそういった機会にあまり恵まれないので、お行儀よくしてるからせめてお見送りだけでもしてくれればもっと頑張ってチケット買って通うよって蛇足。