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ミュージカライブ『アンプラネット-ボクの名は-』6/8-6/18 @紀伊國屋ホール

ポミィのこと、アンプラネットのこと、いろいろなもやもやを残して終わった去年の5月の舞台『アンプラネット』。きっといつかこのもやもやを亀田さんが晴らしてくれる!と信じて1年、ミュージカライブ『アンプラネット-ボクの名は-』が始まった。

 
本来は「知らない」はずの昨年5月の舞台『アンプラネット』ですが、今回その補完がされているので、5月の舞台の内容にも触れながら感想を書いていきます。もし観ていない方がいらしたらDVDを買ってください。あと良かったらミュージカル『CHaCK-UP episode.0』も買ってください!秋葉原アニメイトガールズステーションなどで購入可能です。
 
ちょっとしたあらすじ
離れ離れになってしまった姉さんを探す海王星人のセシィ、エリィ、マーニィ、そして別行動のサティ。姉さんが眠っている宝石「キセキノカケラ」を追って、銀河アイドル選手権の会場に辿り着いた。一方その頃、宝石の運び屋の仕事をしていた便利屋ポミィ。彼の運ぶ宝石こそが大会の報酬、そして海王星人の姉さんが眠る「キセキノカケラ」だった。宝石を取り出して戯れていたポミィに、宝石の中で眠っていたポムリアの魂が乗り移る。
ポミィの身体に憑依したポムリアはヴィーを巻き込んで銀河アイドル選手権に出場することになった。男の身体でアイドルをする姉さんの姿に驚く弟たち。姉さんと再会はしたものの、宝石に戻るのは嫌だと言われてしまう。どうしても姉さんを宝石の中に帰したい弟たちの説得に、ポムリアは条件付きで宝石へ帰ることを約束する。それは、セシィ、エリィ、マーニィ3人がこの銀河アイドル選手権で優勝すること。
3人は、アイドルを目指しながらもなかなか芽が出ないローザ率いる「RABP」のメンバーであるペポ、アビス、ブランの身体に憑依。ポムリアとヴィーのユニット「ダブルワーク」や1000年に1人の逸材と言われるルカルカといったライバル達に挑み優勝を目指すこととなった…
 
 
 
オープニングは海王星人のセシィ、エリィ、マーニィがばらばらになってしまった仲間や姉さんを探しているという歌詞が盛り込まれた曲。
アンプラネットが海王星人であるということは、舞台『アンプラネット』上演当時ビジューの間でまことしやかに囁かれていた。
5月の舞台で不器用に、でも必死に仲間を取り戻そうとしていたアンプラネットの切実さや切なさがこの1曲に詰め込まれ、初っ端から大号泣させられた。
しかし、続く2曲目から雰囲気はガラリと変わり、それどころか後々姉さんともあっさり再会してしまう。ローザと共に歌い、踊ることでいつの間にかアンプラネットの目的は姉さんを取り戻すことだけでなく、銀河アイドル選手権で優勝することへと変化していく。
舞台『アンプラネット』では彼らアンプラネットにとって「アイドル」は仲間を見つけるための手段でしかなかった。
でもドルステのアイドルには、アイドルを夢見て、アイドルであることに誇りと楽しさを感じて、アイドルであり続けて欲しい。それぞれ紆余曲折あれど歴代ドルステアイドル達がそうやって「アイドル」という存在を信じ続けてくれたから、私たちはこの夢のアナザーワールドの中で何も疑うことなく安心してアイドルのファンを続けることができる。
アイドルが目的でしかなかったアンプラネットの主演舞台だからこそ、このミュージカライブはアイドルが主軸だったのだろう。
大会の最後に歌った曲にこういう歌詞があった。
「アイドルはみんなの憧れ 憧れられたら嬉しい 君がいてよかった」
それは本当に儚い夢かもしれないけど、大好きなアイドルにそんなこと歌われたら一生ついて行くしかない!キラキラの笑顔が涙で霞んで、この世のものとは思えない輝きがわたしの目の前に広がった。
 
物語の主人公は便利屋ポミィ。登場するとミュージカルが始まった!と感動するくらいの圧倒的な歌唱力、表現力。
登場曲は2015年に上演されたミュージカル『CHaCK-UP episode.0』(以下エピゼロ)のポミィの登場を彷彿とさせるダンス、相変わらずお金がすべてという歌詞。でも彼の仕事着のポケットにはあの日天王星の皇子から受け取った前払いの「報酬」がきちんと入っている。
続く掃除屋ヴィーの登場もエピゼロを何度も観た者には懐かしい。
そしてヴィーから、ここで銀河アイドル選手権がある事を知らされたポミィが歌う、彼がかつて抱いていた夢を歌った曲。これが登場曲と同じメロディで歌われる。歌詞も、エピゼロでレイが歌った「ドリーム」にオーバーラップして涙を誘う。この一連の流れが本当にずるい。もちろん今作だけでも十分楽しめるが、過去作を観ている人は何重にも楽しめる仕掛けが仕組まれている。
あの時レイにあれだけ強引に説得されても拾うことのできなかったポミィの夢が叶ったラスト
シーン。ドルステミュージカルシリーズの主人公である便利屋ポミィの切ない物語に光が射した。
 
衝撃的だったのがダブルワークのポミリアとヴィー。女子(?)が2人になることで舞台上のバランスがとてもよかった。少し強めのポミリアのキャラも、隣にいるのが完璧なキラキラ女子を演じるヴィーちゃんであることで中和されていた。
ポミリアはディ◯ニープリンセスのような可愛らしさ。そして、掃除屋ヴィーの高いプロ意識に裏付けられたヴィーちゃんのぶりっ子ぶり!オンとオフが瞬時に切り替わり、そのギャップがとてもおもしろい!
 
ARBPは地球人キャストの特徴を生かした、さすが亀田さん!なグループだった。特に印象的なのはペポとブラン。ペポはその特大マシュマロボディでキュートな腹ペコキャラに、現在進行形でどんどん進化している。セシィが憑依した時の豹変ぶりも可笑しい。憑依した時のおもしろさでいったらブラン。憑依したマーニィが「この体すっごく喋りにくいよ!」と苦戦することで、彼の特有のアクセントが唯一無二の個性に変わった。
アンプラネットの5月は物足りなかったそれぞれの個性も、今回は舞台上でイキイキとしていた。イマイチ面白みの無いセシィ(※愛です)も、ポムリアにウザい言わせることで面白みの無さがおもしろさに変わる。
もしかしたら欠点になっていたかもしれないそれぞれの個性が、亀田さんが拾って役に昇華させる事で愛しさに変わっていく。だから亀田さんの物語は誰にでもとても優しい。
 
ラストシーンで便利屋ポミィが、彼を便利屋と呼び、これから行動を共にしたいと申し出るアンプラネットにこう伝える。
「ポミィだよ。ボクの名前は便利屋ポミィ。一緒に来るなら名前くらい覚えてよ!」
この台詞だ。これを、きっと未だに姉さんを探し続けているアンプラネットに分かって欲しかった。君たちが手に入れたポミィは姉さんの器ではない。1つのかけがえのない魂なんだ。それを今回、「全てを分かっている」ポミィ自身が伝えてくれた。
「ポミィ!これからよろしくな!」と屈託無く答えるエリィ。もしかしたらこの熱血で直情的で少しお馬鹿な男の子が、アンプラネットの未来を救ってくれるかもしれない。
 
普段は1対多な舞台との繋がりを、ミュージカライブ中は1対1で感じられる光の仕掛けも涙を誘う。楽しいレビューパートと宇宙人流なお見送り、本当に盛りだくさんで満足度の高いミュージカライブだった。