キイロイ

ホシノつくヒト

ハダカ座公演vol.1『ストリップ学園』@新宿FACE 2018.1.12-1.20

東京新宿歌舞伎町

 

大量に焚かれたスモークの甘い匂い、ピンクや紫の艶やかな照明。

「ストリップ学園」は非常識がよく似合うこの街の中でも、きっと1番熱くて、鮮やかで、そして秘密めいた世界でした。

 

 

物語の主役はストリッパーに憧れてストリップ学園に入学した5人の少女。ラン、葉子、朋美、姫華、いちご。

みんなそれぞれに可愛く、ひとりひとり愛おしい女の子だったのは、思わず「これは私だ」と感じてしまうような秘密を抱えていたからではないでしょうか。

 

 

最初に秘密を打ち明けるのは姫華。お嬢様らしく敢えてお高くとまっているような振る舞いと、本当は友達をとても大事に思っている素直さが可愛らしい女の子でした。

 

中学生時代のエピソードとして、同級生から仲間外れにされ、大人に近づくことでその同級生たちを出し抜く姿がテンポ良く気持ち良く描かれています。

有名政治家の娘という肩書きにも、自分の容姿にも、きっとそれなりに自信を持っていたであろう姫華。そんな彼女が、自分の性に群がる男たちの視線と視線を浴びることへの快感を覚えます。

 

女の子が自分の性を使う自由。

姫華の父はストリップ好きでありながら、娘のストリップに反発し文化祭を中止させます。しかし次の登場で、姫華は「家でたぁ!!」とあっけからんと言い放つ。

女の子は自らストリッパーを選び、踊り、脱ぐのです。ここに男の抑圧などあってはならない、男の視線を支配するのは女です。

一貫してそれが貫かれていたから、この作品は少しも下品にならず清く、妖しく、美しい世界でした。

 

そんな姫華を演じた藤原祐規さん。

お芝居も歌も、圧倒的に力がありました。

特に歌は力強くも官能的で美しい。視線の使い方、立ち振舞い、客が何を喜ぶか分かっているあざとさが、姫華を美しく飾っていました。

 

 

芹沢尚哉くん演じる朋美。

貧乏に生まれ、生きるために、そしてダンサーになりたかった自分の夢を殺さないためにストリッパーを目指します。

 

姫華と朋美は、金持ちと貧乏というだけでなく、自分の性の価値を、姫華は視線によって、朋美はお金によって自覚しているという点でも対照に描かれていました。

 

朋美は満面の笑顔がとても印象的です。

ランも満面の笑顔を見せますが、朋美は悲しみも怒りも笑顔で押し殺すように笑います。自分の不幸を見せまいと笑う姿は、普段の何倍も大人びて見えました。

 

だからこそ、年相応にはしゃぐ彼女の姿はとても可愛い!

パジャマとも呼べないようなスウェットの下で胸をたゆんたゆんと揺らして飛び跳ねる姿。

姫華が用意した高級な(?)食事に目を輝かせる姿。

そしてエンディング、大きな胸を丸出しにして大口を開けて満面の笑顔で歌う姿。

思わず目を奪われてしまう、とても好きな女の子でした。

 

 

石田隼くん演じる葉子。

全盛期をとっくに過ぎた今もストリッパーとして踊り続ける母に反発して自分もストリッパーを目指します。

 

ストリッパーの母を持つという普通とは違う境遇にいながらも、この学園の生徒たちに比べたら、おしゃべりが大好きな普通すぎる女の子です。

葉子のおしゃべりはまるで、自分に足りない覚悟や経験を誤魔化すかのように続けられていました。

ハダカ座の支配人から、「お前はラウンドワンとか行ってはしゃいでいるのがお似合いだ!」と言われる場面があります。葉子を表すにはあまりに的を得ている一言。

姫華や朋美の秘密を目の当たりにした葉子に支配人の言葉は、思わず反発してしまうほど重く響いたに違いありません。

彼女が朋美に自分の秘密と弱さを打ち明けた時、姫華や智美が少しだけ先にいたことを認め、そしてようやく並んだ瞬間だと感じました。

 

と、いろいろと書きましたがそんな小難しいこと吹っ飛ぶような石田くんのエキセントリックなお芝居は、女の子役の今回も健在!雄々しい声と独特な表情、どうしてそうなった?と困惑するような動き、だんだん三つ編みをした石田隼を見ているような気分になりました。

 

個人的にツボだったのが、男性ストリッパーの武ユタカ。うまく言えませんが、あの妙な(それでいて本人はきっと無自覚な)キメ顔が本当に好きです。

改めて、石田隼は天才なんだと思います。このまま突き進んで欲しいです。

 

 

そして、いちご。

乱暴な言い方になりますが、女の子はみんな「いちごちゃん」だと思います。

 

みんなそれぞれの心の中に愉快なナースを飼って、深い傷を負った「わたし」を癒しているでしょう?

新しいワンピとかシャネルのリップとか、強くなれる気がするそれぞれの「ナース服」を着て生きているでしょう?

 

この物語の中で1番観客に近い位置にいるのはいちごちゃんだったのかなと思います。

 

「わたしのこと、見えますか?」と、いちごちゃんは問います。

 

無視されずに描かれるという優しさがこの物語にはありました。

本当に誰かを救おうと思ったら、痛みは必ず伴うものです。

 

コーラの注文が通らない女の子、

お金を介さないと会えない相手に恋をした女の子、

キスをしたことのない女の子、

仲間外れが怖い女の子、

 

女の子たちが胸の奥に抱える柔らかい部分を本当にさりげなく、もしかしたら救われたなんて思い違いだったんじゃないかって感じるくらいさりげなく、混沌と混乱の中で描いてしまうとんでもない作品でした。

 

 

少女たちが服を脱ぎ捨てて裸になっていく中、ストリッパーになるために服を着ていく必要があったのが、古谷大和くん演じるランです。

 

ランは初めから素っ裸の少女でした。

絵に描いたような天真爛漫さはまるで3歳児!喜三郎と出会って楽しそうな姿は頭のネジが2、30本抜けちゃっているのではないかと心配になります。

 

恥じらいを知らない女の子なのに、踊りだすと誘惑的な姿に魅了されてしまう。

言葉以上に天性の才を感じるのは、演じる大和さんの持つ才能と魅力なのだろうなぁと思います。

 

そんなランが絶望の中で魅せるソロストリップ。

纏った衣服を愛する男のために脱ぐことを知って、ランは一歩大人に近づきます。

感情いっぱいの踊りに、ウズメ嬢のような慈愛や自信はまだ無いけれど、幼虫が蛹になって脱皮するような力強さと若さを感じました。

 

そして大和さんの身体が凄かった!

1mmの弛みもなく割れた腹筋が天井を向いて、褐色の肌を濡らす汗が光ります。

逞しい脚は惜しげも無く開かれる。

なのに、身体の上には柔らかく揺れる胸と、とびきりキュートなお顔が付いていて、男も女も超越した不思議な魅力がありました。

 

 

女の子たちがそれぞれの魅力を見せる中、圧巻の美しさで「アゲハ」の称号が持つ意味を示したのが、中村中さん演じるウズメ嬢。

とにかく美しかった。綺麗だった。そして誘惑的で強くて、優しかった。

どんなに言葉を並べても意味がないくらい。一目瞭然。

ハダカ座を壊さんばかりの歌声と挑戦的な詩は心に絡みつき、そしてゆっくり溶かされるようでした。

とにかくあの場にいれば1秒ですべて理解できるし、次の1秒ではもう虜になってしまいます。

 

 

おチップや紙テープも楽しかったです!

紙テープは、大好きな踊り子さんのステージを自らの手で彩れるという楽しさがありました。

 

おチップはメンズストリッパーに渡すのですが、限られた時間であちこちに行ってチップを回収しなければいけない彼らが、けっこう雑に手からチップを奪っていく姿が個人的にどストライクでした。

客も客で慣れてくると、大好きなはずの彼らにかなり雑にチップを押し付けるので、漂う無礼講な雰囲気がおもしろかったです。

 

 

ざっとこれだけのことが、超音速マッハで繰り広げられるのです。

どのくらい速いって言うと、1年間が2時間に感じられるくらい!

第2幕の始まりを聞いた次の瞬間第15幕が終わってるくらい!

 

役者達の衣装は汗でべったり肌に張り付き、客の脳みそはボコボコに殴られKO寸前。

「ストリッパーになりたくてたまらない!」と叫びながらパンティを脱ぎ捨てる女の子たちのなんと気持ち良いこと。観劇後、私も無性に脱ぎたくなりました。

 

 

大和さんの言葉を借りるなら、この非常識を引きずったまま、私たちはまた常識の世界で生きていかなければならないみたいです。

 

 

早くまた、あの可愛い“少女たち”に会いたいなぁ。