推しの初主演と向き合った日の記録・演劇集団イヌッコロ「オタッカーズ・ハイ」
日本一地味な若手俳優だと思っていた我が推し、星乃勇太さんが初めて主演を務めた作品、イヌフェス第3弾 演劇集団イヌッコロ Showcase vol.6「オタッカーズ・ハイ」が先日無事に全公演を終了しました。
今まで舞台に通う中でこんなに、「無事に幕が開いて、無事に幕が閉じますように」と願ったことはないくらい。
某さんの“いっぱくふつか”に便乗して竹島の神社で成功祈願まで行いました。
前売りチケットはほとんどsold out、小さな劇場だけれど毎回満席になって本当に良かったです。
芝居に関しては、わたしはある時期から星乃さんに絶対の信頼を置いているので、主役を演じるということも不安は全くありませんでした。
しかしそれ以外の面、座長挨拶とか、現場の雰囲気作りとかも座長がやるのかなぁとかはもうめちゃくちゃ心配していました!少しでも星乃さんを知っている人なら、得意じゃなさそうなの分かると思いますが。
今回は座長といえど、演劇集団イヌッコロにゲスト俳優として呼ばれた形だったので、その点は良かったのかなと思います。
座長挨拶なんて、残り3公演でようやく始めましたから。
心配を他所にうまいことやってくるだろうと思っていましたが、思っていたよりもぜんぜんダメでしたね!!
しどろもどろで共演の役者に「締めんの下手だな!」と言われていたのには笑いましたが、作り込んでこない挨拶に、星乃さんがこの空間を少なくともアウェイとは思っていないことが伝わって少し安心しました。
オタクを甘やかさないことに定評のある星乃さんですが、今回はかなりファンを意識して行動していたように感じます。
祝い花のプレートにサインやメッセージを書いてくれたのは初めてですし、物販のランダムチェキも毎日撮ってかなりの枚数に落書きしたりシールを貼ったりしてくれていました。
祝い花との2ショットをランダムチェキに混ぜオタクを混乱に貶めたのは、優しさが暴発した感じでめちゃくちゃ可愛いです。
2年前「ご町内デュエル」の際の、容赦無く自分の顔をぶった切った祝い花コラージュ画像に続き、新たな伝説が生まれました。
「オタッカーズ・ハイ」は、オタク研究会が部の存続をかけ学祭でアイドルライブを企画し、成功させるために奮起する物語です。
アイドルにドタキャンされ唯一の女子部員・堤を替玉として立てたことによる勘違いが生むコメディであり、部の後輩である堤と主人公・柳井の成長物語でもありました。
先輩たちの底力や堤の変化を受けて柳井が成長していく姿は、今まさに上昇途中の星乃さん自身の姿にも重なりました。
星乃さんも言っていたように、柳井は人の行動を受けての芝居が多い役でした。
そして観客の感情は柳井が見せる感情によって定義されます。
そうやってある意味柳井によってオタ研に振り回され、その柳井の底力に驚かされ、成長に泣かされる物語はとても気持ちよかったです。
小劇場の、本当につま先に舞台があるような劇場で芝居を観ることができたので、表情も声も汗も堪能することができました。
定評のあるコミカルな芝居も、メインになる時とサブになる時の緩急があって、それぞれの場面で最大に面白い表情を見せてもらいました。
そんな中で1番心に残ったのは、オタ研を守ろうと自治会会長に土下座をする場面です。
喜怒哀楽では分けられない微妙な表情からその心情がありありと読み取れて、心にツンときます。
何もできなかった柳井が、がむしゃらな脱皮を見せる温かい場面です。
柳井が変化を見せる最初のきっかけとなるのは堤の変化でした。
チームAで堤を演じた伊藤佳織さんは、彼女の芝居が作品全体の雰囲気を押し上げてしまうような、細やかでパワフルな芝居が印象的な役者さんでした。
伊藤さんが今作の堤役で良かったです。
客席のオタク達の共感を呼び涙を誘ったのは、チームBニトリ役の岡田武義さん。
オタ芸の技が群を抜いているのと、「杏奈が1番 みんなの1番」「届け 杏奈」という叫びが同じオタクとして心に突き刺さりました。
「楽しかったです」
千秋楽の挨拶で星乃さんのその一言を聞いた途端、なんだかひどくほっとしてしまいました。
星乃さんが自身の初主演と向き合っていたのと同じように、わたしはわたしで“推しの初主演”と向き合っていたみたいです。
そういえば星乃さんは、ニトリのオタ芸を好きな場面で挙げていました。
名前を叫ばれる側の星乃さんがこの場面を選んだのは、いつも叫ぶ側にいるわたしからしたら少し意外でした。
劇中ではライブの後、杏奈はニトリに「ニトリさんの声、聞こえたよ」と伝えます。
星乃さんの名前も叫ばれてるんだよ、知ってるかなぁ。
声、聞こえているかなぁ。