キイロイ

ホシノつくヒト

「ミュージカル『テニスの王子様』青学vs氷帝」7月14日(初日)

青学8代目の卒業公演。覚悟と闘志を胸に秘め舞台に立つ青学は、M1でその姿を見るだけで強さを感じさせた。っていうか初日の段階では不二と菊丸だけで氷帝テニス部200人壊滅させられそうなほど青8は強くなってた...ひとつひとつ感想を書いていくつもりはないので思いついたことをつらつらと。
まずオープニングの山吹。ラッキー千石のメロディに合わせて山吹のメンバーが順に登場、最後に千石が出てきて「オープニングは俺ってクジで決まったでしょ?!」とか、「いつ見てもこの景色は最高だな。激かわいい女の子がいっぱいだ」とか、「スタート!」という合図(以上セリフは全てうろ覚え)とか、関東大会の始まりというよりはテニミュの始まりを告げる前座のような役割。次元で言ったら、このシーンの山吹はまだ観客と同じ次元にいた。
新曲は確かに多かったけど、内容自体に新鮮さは皆無で基本1st2ndの繰り返しという感じ。3rdの山吹公演あたりから「これ前にも観た」という感想が真っ先に来てしまうようになってしまってとても残念だなと思う。その中で新鮮さを醸し出してたのが跡部景吾役の三浦宏規くん。今までの跡部様はずっと大人っぽいかっこよさや色気が重視されていたのに対し、三浦くんは「坊っちゃま」というところが強調された感じ。舞台上のビジュアルは OVA氷帝入学時跡部様に見える。大人っぽさは無いけれど三浦くん自身のパーソナリティであるバレエの動きで品の良さが表現されていた。新氷帝校歌には跡部様のソロダンスシーン(バレエ風味)があって、こうやってキャストの特技が生かされるのはテニミュらしくて個人的にはとても好き。「俺様の美技に酔いな」というセリフの後に来る跡部様のソロ曲も1st2ndは「跡部様による跡部様の為の跡部様賛歌」のイメージだったけれど、今回は「対手塚」が強調されていたように思えた。後は「恥ずかC〜」の「C〜」の発音低めなジロー。これだけで今まで蔓延っていた「あざと可愛さ」がこんなになくなるんだぁと感動した。逆に滝は歌い方、セリフ、所作、ついでに顔、どれをとっても2nd滝のそのまんまで、もう少し他のアプローチもあったんじゃないかと心配になる。個人的に注目してた忍足侑士役の井阪郁巳くんは、細めでスタイル抜群なビジュアルはほぼ満点だった。歌は上手だけど関西弁は不自然。
氷帝戦の裏テーマは「ダブルス」だと思っている。ゴールデンペアは皮肉なことにその形が一度崩れることで存在感を増す。菊丸役の本田礼生くんと大石役の石田隼くんは丁寧にゴールデンペアを作ってきたのだろうなと感じるダブルスとしての存在感を一度ダブルスでなくなってしまうこの公演で強く感じた。この二人はプライベートの距離感が自然で、関係性作りも役作りの一環、プロとしてゴールデンペアに丁寧に向き合ってる印象でとても好感が持てる。礼生くんの菊丸はキャピキャピした可愛さも魅力の一つだけど、今回は先輩として試合中は特に封印していた様子。桃城役の眞嶋秀斗くんも後輩らしさと、突然ゴールデンペアの間に入ってしまう良い違和感があった。新曲が売りになるような今の流れで「夢をつなげ」と「三人でダブルス」が1stシーズンから変わっていないことも素敵だなと思う。もう一つのダブルスは新曲のダブルス賛歌が入っていた。長い時間で関係性を作ってきた宍戸・鳳と新造でお互いの利益のためにダブルスを組む乾・海堂の対比が見所なので、2組が同じダブルス賛歌を歌うのは違和感があったけれど…
リョーマvs日吉は相変わらず「あいつこそがテニスの王子様」、リョーマのソロパートは新曲になっていた。うろ覚えなのだが歌詞の中に「テニスを始めたわけもわからずラケットを振っていたあの日からベストテンションだった。初めてコートに立った時緊張したけど嬉しかった」というニュアンスの言葉。まるで天衣無縫時のような歌詞。この氷帝戦の他のリョーマでは歌えないし歌わせなかっただろう。この曲を最後に歌って卒業していく古田一紀だからこそ意味が生まれる歌詞だった。こういう形でキャストとキャラが重なるのは他の2.5次元舞台ではできない、テニミュならではの作り方で、これがテニミュの面白さだと思う。青学バラードも楽しみにしていたのだがそういえば青学バラードが追加されるのは大阪公演からだった。すっかりバラードが来ると思っていたので「tomorrow for you and I」を歌ったのには驚いた。2ndシーズンであの曲は、青学6代目が氷帝の後六角、立海と公演を重ねるからこそ、そこに一緒にいることのできない手塚との絆を再確認して忘れさせない為の曲だと思っていたので、全員が卒業してしまう青学8代目に歌わせるとは思わなかった。
この氷帝戦は卒業公演で、確かに青学8代目は強くなっていた。けれど余計な気負いは感じず、座長もいつも通り飄々としていた。彼らはこの氷帝戦が最後であることを最初から分かっていて、ここに向けてひとつひとつ積み重ねてきたようにも感じる。千秋楽、どんな姿で卒業していくのかとても楽しみ。