キイロイ

ホシノつくヒト

「to be YOU to be ME 」@新宿THEATER BRATS 5月27日ソワレ

大学生6人+隣人が織りなすシチュエーションコメディ。雰囲気の良いスタジオに作られた小劇場、登場するのは男性若手俳優だけ7人、ストレートプレイで話しは観やすくておもしろい!若手俳優のオタクからしたら羨ましすぎるくらい、わたしにとっては理想的な演劇だった。推しが出てたら喜んで全通するやつ!

 
脚本・演出は亀田真二郎さん。わたしは「ドルステ(ネルケのアイドルステージシリーズ)」と「インスピッ!!(タイムリーオフィスの劇団)」で何度かこの方の演劇を観ていて、今回も脚演が亀田さんだから観に行ったところがある。もともと好きなのだけど、今回は今まで観た中でも1、2を争うほどおもしろかった。
最初は岩義人くん演じるユーヘイに感情移入してしまい少々しんどい。一緒に呑んでいた大学の同期コーちゃん、リョウくん、コダマさん、ヒロシくんにイジられてキレる。そんなユーヘイが苦手なお酒を呑んで寝ている間にユーヘイを除いた4人の中身が入れ替わった。自分だけ入れ替われなかったことに焦ったユーヘイは遅刻しているタカちゃんと入れ替わっていると嘘をついてしまう。汗だくになって、取って付けたようにタカちゃんの真似をするユーヘイ。全く事情の分かっていないタカちゃんが到着してから事態はますます悪化する。2人がコンビニへ消えると場面転換し、時間がユーヘイが寝てしまった直後へ巻き戻って最初のネタばらし。
この場面転換がグッとくる!音楽に合わせて突然機械的に動き出す役者たちが登場人物ではなくなる瞬間。如何にも舞台的な演出に心が踊る。前回の「BGにつぐ!」で見て大好きだったので、今回また観られたことに大感激した。
ここから視点は、入れ替わっていた4人へ移る。実は入れ替わったなど嘘で、ユーヘイを騙す為演技していただけだった。
亀田さんの舞台を観ていていつも悔しく思うのが、この視点を操作されていることに気付いた瞬間。次にユーヘイとタカちゃんが出てきた時はもうしんどさは無い。練習してきたのであろうユーヘイとタカちゃんの不自然な入れ替わりを滑稽に、でも早く本当の事を言ってあげないと可哀想だなぁと見ていられる。
2人の帰宅の前に、冒頭で1度部屋に入ってきたアパートの隣人が再登場する。他人なのに爽やかに「お待たせ」と入ってくる姿がじわじわおもしろい。自然にiPhoneを充電しようとして、とうとう追い出される姿はもう一回観たいくらいだった。
ユーヘイとタカちゃんの不自然な入れ替わりの中で暴走を始めるのがタカちゃんを演じる石田隼(敬称略)。彼の張り付いた笑顔と言葉では言い表せない「妙に変」なおもしろさが120%発揮されていた。もう存在しているだけでおもしろい!石田隼輝いてる!ドルステは特に思うのだけれど、亀田さんの役者の魅力を見つけて役に昇華させる才能にはいつも平伏すしかない。今回唯一よく知る役者だった石田隼が、素以上に素の魅力(?)を撒き散らしている姿を見て本当に亀田さんは天才だと思った。
 
物語も終盤、騙されていた事を知らされたユーヘイ。その後もコダマさんに「残念だ」「サムイ」と言われることにキレて部屋を出ようとする。そんなユーヘイを引き留めたコーちゃんの言葉。
「残念ってそんなに嫌かな?だって残念なのがユーヘイじゃん。残念なユーヘイが俺は好きだよ。」
ここで冒頭のシーンを思い出す。リョウくんが映画「ハル○カ」の話しをしながらコーちゃんやユーヘイに「恋愛映画の裏で、40点の俺たちは人知れず消されとるんや!!」と喚く。その時は「若手俳優使って顔面40点って…」と笑っていたが、ここで繋がった。「40点の君が好きだ。」
亀田さんの舞台は登場人物を「役者」に戻すようなことはしない。客席と舞台の間の壁は決して揺るがないし、半端に崩すようなこともしない。それでも壁を越えたこちら側に、物語を超えたメッセージを送ってくれる。
わたしが見たいのは、若手俳優というだけでイケメンにカテゴライズされてキャラクターを被って動く推しじゃない。顔面は40点でも彼らしい魅力を存分に発揮する姿だ。「40点でも、残念でも、神経質でも、ファンサが苦手でも、それが推しなんだ。そんな推しだから好きなんだ。」
40点の若手俳優を追いかけるオタクに投げかけられる優しいメッセージと入れ替わっていたタカちゃんと隣人の謎を残して物語は終わった。
 
今度は是非、わたしの推しを使ってください。