舞台『アンプラネット- Back to the Past!-』2018/1/5-2018/1/14@品川プリンスホテル クラブex
アイドルステージシリーズ第4弾アンプラネットの新作、『アンプラネット-Back to the Past!-』
1秒も見逃せない、1ミリも隙のないこの舞台をどう書いたものか悩んでもう何度も書き直しています。
アイドルステージシリーズで何が魅力というと、やはりアイドルへの揺るぎない「愛」だと思うのです。今作でも、個性的なアイドルたちを零すことなく1人1人丁寧に拾って、全員が魅力的なアイドルになっていました。
その中でも、今作でまた違う魅力を見せたのが1番上の兄であるセシィ。
今までのセシィは、ときどき隙や熱さを見せながらも、基本的には冷静で頼れる存在でした。
しかし今回、何年も何十年も何百年も探していた姉さんを手に入れられる機会を前に、兄弟の中でも圧倒的に焦り、余裕を無くしていたのはセシィでした。
今にも泣き出しそうな顔、切羽詰まった必死な顔。美しい顔が歪むほどのセシィの表情には、ライブとは違う方法でビジューの心を締め付ける魅力があります。
もちろん、セシィだけではありません。
マーニィはライブの時のきゅるきゅるした可愛さとは違う、男の子っぽいちょっとガサツな動作や話し方をする緩急にやられてしまいます。
サティのそのまっすぐな瞳の輝きに違わない澄みきった言動は、老若男女問わず観客全員の母性本能を刺激していました。
美波日音は、アメリカにいた頃の姿が描かれています。
CHaCK-UPに入った頃とまるで印象の違う、暗くて自信の無い姿でした。
しかし、ジェームズに「お前は一生ステージに立てないのだから」と言われ、睨むとも悲しむとも思える表情でじっとジェームズを見やります。それは、ジェームズが怯むほど強く。
「宇宙一のダンサーになること」便利屋ポミィがずっと語り続けている夢に通じる日音の強い意志が見えた、とても好きな場面です。
これは余談ですが、充分に才能があるのに、華やかな兄や地味な容姿によって自信の持てない時期があった日音の目に、根拠のない自信に溢れた天宮王成という人物はどう映ったのでしょうか。
2人が出会い、それを強調するかのように『ミュージカル「CHaCK-UP -Episode.0-」』が描かれたのは運命的に感じます。
アイドルステージに登場するアイドルは単なる”キャラクター“ではありません。
例え舞台の上にいても、吐いた息のあたたかさを感じられるほど”生きている“から、彼らの物語は多くの人を惹きつけて、そしてそのまま離さないのです。
あの日、CHaCK-UPのヘルプクルーだった日音は自分の居場所を求めてアンプラネットを選びました。
見ているこちらの居心地が悪くなるほどポミィ中心に作られたステージ。リーダーとして用意された場所に収まっただけのように見えた日音でしたが、その直向きさは確実にアンプラネットの心に届き、自分の居場所を自分で作っていたことが今回ようやく分かりました。
その証拠に、日音はアンプラネットがいなくても、自分の居場所を自分の手で掴んでいます。
日音が積み重ねた努力が、姉さんも入っていないただの高校生である“美波日音”をアンプラネットに選ばせたのです。
そしてこの物語で、姉さんの魂が日音に移ったのはエリィの所為だったということが明かされました。
個人的に、前回の『ミュージカライブ「アンプラネット-ボクの名は-」』で、きっとこの八方塞がりな状況を打破してくれるのはエリィだと思いました。
エリィだけが、ポミィに着いて行きたいという意思も、アイドルとしてCHaCK-UPと対峙する理由も、もうすでに持っていたから。
だからこそ今回エリィが不在の中で、エリィが無意識に導いてくれていたチャンスを掴めたのはとても意味のあることだったと思います。
「どっちも頼む」
ひとつだけを求めて途方もない時間を彷徨い続けたアンプラネットが見せた初めてのワガママ。姉さんも日音も欲しがった瞬間、彼らはようやく「アイドル」になりました。
そして、まだ初々しいアイドルたちに要様が語ったアイドル論。
「帰る居場所が出来た時、僕らは初めてアイドルになれる」
「仲間が、応援してくれる人たちが居場所を作ってくれる」
アイドルとは居場所であり、居場所とは「帰る場所」である。
この言葉はそのまま、何度も時間移動を繰り返してきたアンプラネットが、それでも戻ってくる2018年の地球に確かに存在している「アンプラネット」というグループへの言葉になります。
しかし、それと同時に、時間が経つにつれて揃うことが困難になっていく、ここで生まれた全てのアイドルグループとそれを応援するわたしたちへの言葉になりました。
E.T.L vol.9で、ポミィの出番は極端に少ない。そして、きっとこれがアンプラネットの答えです。
日音がアイドルだったからアイドルを利用していた彼らが、アイドルを選び、アイドルになる為に立つ初めてのステージ。
ようやく横1列に並んだ彼らは、もうポミィを中心に立てる必要はなくなったのでしょう。
3部作にも及んだアンプラネットの物語は、今回の作品で第1章の完結を迎えました。
今までのアイドルがそうだったように、これからの「物語」はすべてわたしたちの目の前で起こります。
アイドルステージのライブパートはあくまで物語の続きにあるのです。
生まれた瞬間黄チャームだったわたしにとって、今回は初めて金星人★ヴィーのいないアイドルステージでした。(ヴィーちゃんっぽいのはいたけど)
アイドル達にとってアイドルが帰る居場所であるように、わたしにとっても、アイドルステージは帰る居場所です。
そしてもちろん、その居場所に大好きなアイドルが欠かせません。
大好きなアイドルが帰ってくる未来を守るために、わたしはこれからも「アイドル大好き!」「アイドル最高!」と叫び続けるのだろうなぁと思います。
そんな今回の物語で誕生したアイドルが、彼らの世界では伝説となった三日月を追っかけてやってきた未来人アイドルのプライムーンだなんて。
未来のために過去を紡ぐ、また新しい物語の始まりにわくわくするのです。