キイロイ

ホシノつくヒト

おっさんずラブ 2018/4/21~2018/6/2 @おうち

 

楽しかったですね。

最終回放映後はじめての日曜日、澄み渡る青空に包まれて世界はキラキラしていました。

 

ジェンダー論とか伏線回収とか読唇術とか、たくさんの人が考察をしてくださっているので、ここにはわたしの感想だけ記録しておこうと思います。

因みにわたしは7話をその晩のうちに2周観ましたが、「巨根じゃダメですか?」の伏線回収しか分かりませんでした。伏線なのかあれは…?

 

 

この物語では主人公の春田創一が、部長に同僚に幼馴染に恋されるということでしたが、なんで春田?とは思わせない力がありました。

 

春田がどんな人なのか言葉にしてしまえば、ダメなとこの方が多いんですよね。

牧も「悪いところ」なら10個すぐに言えてたし、部長もラブレターに「バカで」って3回も書いていたし。

部長はもっとはるたんに盲目的な恋をしているのかと思っていましたが、10年も恋をするとたくさんの欠点も「可愛すぎるぅ~」に集約されてしまうのだなと思いました。おっさんのラブは深いっすね。

 

それでも、彼が人に好かれることには、充分過ぎるほど説得力がありました。

春田の美点とされるところを言葉にしてしまうと安っぽくなってしまうのですが、本能的に人間が惹きつけられる理由を持っている人です。

 

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彼の顔って、思惑のない彼の心を象徴してるかのようにピュアなのだ。(中略)がっしりとした体に、悪気のない表情を載せている男の子ってあまりいないものだということに最近、気がつき始めていた。

山田詠美/放課後の音符(キイノート)

 

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これは、私がこの世で1番好きな「男の子の描写」のひとつです。

春田にも、こういう、大人になってしまった男の子女の子の「心のある部分を、きゅんとつねる」魅力がありました。

 

 

そんな春田に恋をする牧遼太。

 

目は口ほどに、どころか、音にできなかった言葉がポロポロと零れ落ちる宝石の瞳が、春田とは別の意味で観る者を惹きつけたのは言うまでもないでしょう。

 

牧が少しダボっとした私服を好んでいたことが気になっているのですが、どう解釈したら良いのでしょうか。

小柄な身体を少し大きく見せる為なのか、筋肉質な身体を華奢に見せる為なのか。

伝説のバックハグ、春田の身体は言うまでもありませんが、盛り上がった牧の胸筋にもトキメキを覚えざるを得ませんでした。

 

そして、全人類が恋した武川主任。(※個人の見解です)

 

思い返せば脚ドンも、手を握るのも、顔が近過ぎるのも、傷口ふーふーも、指を絡めるのも、おデコとおデコで熱計ったりなんちゃったりも、壁にドーン!も、最後には手を握られちゃったりなんかして、「胸ギュン」場面のほとんどを武川さんが担っていたではないですか?!

 

牧が「マサムネ」と呼んだ瞬間、何故か私が、何故か武川さんにラブを持っていかれてしまったのは、いったい何力学の力が働いたのでしょうか。

 

付き合った当初の牧は武川さんがドヤっていたように、「アイツ俺がいないと駄目なんだよ」だったのでしょう。

春田に初めてご飯を作った時の「カロリーとかバランスが大事なんで」は、武川さんの受け売りなのではないでしょうか。

それどころか、実家暮らしだった牧が母から料理を学んだのも、武川さんの為だったのかなと思っています。

 

マサムネがいなきゃダメだった牧を愛を込めて育てあげ、マサムネも牧がいないとダメになった時、牧はマサムネの元を巣立っていったのです。

 

どっかのラブソングかよ…

 

最終的には若い2人の背中を押すことになった切ないおっさんずのラブ。

 

青空の下屋上の場面は良いシーンでしたね。

部長が春田との恋を最後から「5番目くらいかな」、と言っていたこと。たくさんの恋をしてきたのであろうおっさんに尊敬の念を覚えました。

 

とりあえず私は次に「隣の家族は青く見える」を観ようと思います。

 

 

マロも可愛かったです!

「はるた」を下の名前だと思って呼んでたところも、蝶子さんの為に背伸びして呑むウイスキーが強すぎて一口で「チェイサー」と言うところも可愛かったのですが、1番心に残ったのは、春田との屋上のシーンです。

 

牧に公開告白、言ってしまえばカミングアウトをした直後、春田の肩を抱いて「友達」として慰める。

このドラマの強さはこういうところだと思います。

 

 

ドラマでは恋愛のひとつのゴールとして「結婚」が描かれていました。

 

私個人としては、「結婚制度」への夢なんて「そうよお得になるからペアを組んだの」くらいにしか思っていません。

ただ、このドラマの「結婚」は、男同士という点で制度的なものではあり得なかった。

制度的な結婚については、早い段階で武川さんが懐疑的に扱っていました。

 

結婚制度を越えて、「結婚」を「好きすぎてヤバいからする」と捉えるマロ、条件に合う人を選んだちず、両方存在したことがおもしろかったです。

 

 

これは余談ですが、どこに挟むべきか分からなかったのでここに。

 

まいまいの貢ぎ癖を観ながら、身に覚えがありすぎて震えました。

まいまいの行動も「愛に形が欲しかった」ひとつの結果だと思っています。

 

戻ります。

 

 

春田は好きの最上級として「結婚してください」を叫びました。

この単純でまっすぐな可愛い春田の姿に、凝り固まった心と頭が柔らかくほぐされるようでした。

 

それにしてもカッコ悪い告白でしたね。

汗だくで、脱げた靴持って、動きも必死すぎて。

 

私は、それが恋愛でも友情でも、男同士の不器用で真っ直ぐな感情が縺れ合い、ぶつかり合うことにトキメキを覚えました。

(製作陣のインタビュー読む限り、「男同士」ではなく、「恋愛ドラマ」を、ということだったようなので、私の感想は意図とは違うのでしょうが。)

 

嘘の無い、吐いた息の生暖かさを感じるような男達の物語。

役者陣が魅せてくれた人間のカッコ悪さやカッコ良さは、喉が渇くほど愛おしいものでした。

 

 

「牧が好きだー!」

春田がそう叫んだ瞬間、大袈裟ではなく、雨は止んで雲は晴れて、青空が世界を包むの感じました。

牧の片思いも、1度も春田からの「好き」がなかった交際期間も、別れる時の嘘と涙も、別れてからの1年も、ついでに6話終了から7話ラスト10分までの鬱々とした私の1週間も、ぜんぶこの瞬間のためにあったのです。

 

牧も春田も顔をぐちゃぐちゃにして。

青空と2人の服の紅白が、そのまま私の幸せの色になりました。

 

そして、そんな幸せの色を引き継いだラストシーン。

春田に「マジでやめろって」と言われて下を向く牧と、そんな牧に気付く春田。

春田が牧の感情の機微に気付いた!と感動しましたが、春田はもともと気付かない人ではないと思います。

1話で、病院に運ばれた春田が無事だったことを知って表情を緩める牧に、「お前でもそんな顔するんだな」と言っていました。

むしろ牧の方が、春田に惹かれれば惹かれる程、春田に感情を見せないようにしていったのです。

よく考えれば、牧の切ない表情はいつも春田の背中に注がれていました。

(まあ、「春田さんのことなんか好きじゃない」をただ1人間に受けた春田だから、100%気がつくとは言い切れないけれど…)

 

あの幸せ色の場面は、もう我慢しないと決めた牧が、春田に感情を見せた牧の成長も感じました。

 

 

と、感動も束の間、悪戯に笑って牧押し倒す春田。

春田をそんな子に育てた覚えなくない?!