舞台『モブサイコ100』〜裏対裏〜 銀河劇場2018.9.13~9.17 / 新神戸オリエンタル劇場2018.9.23
今作の主人公はモブであり、律であります。
私は原作は全くの未読なのですが、前作を観た際にモブの輪郭は律の存在によってより濃くなっていると感じていました。
そして今作、律は大人びた弟、という印象とは裏腹に、幼く素直な中学生でした。
カツラによって変形したテルの頭頂部を「脳が…すごく発達していた…」と解釈するのめちゃくちゃ素直で可愛くないですか?!
モブに「僕に超能力をぶつけてもいいよ?!」と声を荒げる姿は、どうしても兄に構って欲しくて駄々をこねているようにしか見えません。
このシーンの、松本岳の少し上擦る声が好きでした。
他人から見たら完璧とも見える律が、モブにここまで固執しなければならないのはこの2人が兄弟だからこそでしょう。
律が兄のことを「兄さん」ではなく「あなた」と言い換えた後、モブは律に「僕を突き放そうとしたって無駄だよ、だって兄弟なんだから」と言います。
モブのくせに、本質をつきすぎて怖い台詞です。
「ある日の影山家」というワンシーンがエンディングの後に差し込まれていました。
スプーンを曲げてしまって困っているモブを律が手助けする何気ないひとコマ。
兄として心の底から律を尊敬するモブと、「超能力でイタズラしちゃダメでしょ」と言いながら、その声はどこまでも優しい律に、あのラストシーンがあった後だからこそ、こんな2人が観たかったんだ、と思いました。
超能力がこの2人の間に当たり前にあったこと、その当たり前を律だけが持っていなかったこと。
優しい世界を見せた粋な場面であり、残酷な場面でもありました。
律が超能力を持ったことをモブに告白したとき、律はモブに、唯一のアイデンティティ(と、律は思っていたと思う)を盗られて焦ること、黙っていたことを怒ること、など、正常な拒否反応を期待したと思います。
しかし、モブが放った言葉は心の底からの優しい「おめでとう」だった。
この兄弟喧嘩、モブが”こんな“な所為で律はめちゃくちゃ分が悪いですがどう決着するのですかね??(原作未読)
モブ役の伊藤節生さんへの態度とか、vsなだぎ武の態度とか、松本岳のあざとさが悔しいながら可愛いので、次回作でどう決着がつくかを楽しみに待ちたいと思います。
推しの話をしましょう。
今回、星乃勇太さんは生徒会副会長の徳川光と、リコーダーの先っちょをダウジングで探すおさげの女子Bを演じていました。
この女子B、女装に定評のある星乃さんが普通に女子生徒を演じたら可愛くなりすぎちゃうせいか、変なダウジングのロッドを持つに相応しい(?)メイクと表情と発声で、なかなか癖のある子に仕上がっていました。
キャーとか言いながらスカートを自ら捲りあげてパンティを丸出しにするのですが(しかも2度も)、紙おむつのような柄パンティと煮干しのような脚の色気のなさ!
諸事情で作品名は出せませんが、自分の脚をあれだけ色っぽく使いこなす星乃さんが、コメディの文脈ではそれを微塵も感じさせないところに、役者としての力を感じました。
初日こそあまりに驚いて叫ぶのを堪えたもの、毎回拍手喝采がおきてもおかしくない丸出しっぷりだったのですが。
若干引き気味の客席に、パンツごときで引いてんじゃねーよ、っていうかまあまあウケてる「思春期の女ってこえーよなー」って台詞の方がよっぽど笑ってる場合じゃないドン引き台詞だからな?!と、価値観の合わなさに憤慨していました。
後半なんて、イケてる女子Bちゃんのパンティを見る為に劇場入ったと言っても過言ではないです。
見事でした。
そして、前作に引き続きメインキャラクターの徳川光。
今作は、徳川さんの信念やそれを真っ直ぐに貫く様子、親友が相手だからこそNOと言える強さなど、彼の格好良さを見ることができました。
「ふっ」と笑うとこなんてめちゃくちゃに格好良くて、もうさっさと塩中に入学してダウジングで徳川さんを探し回りたいくらいです。
圧の強い表情も、コミカルだったりシリアスだったりの使い分けが圧巻でした。
堅いようで様々な表情を見せ、それでもブレない安定感があります。
他に気になったのは、オープニングのショウくん。
オープニングで登場時、その一瞬のキメ顔で、彼はいったい何億人の老若男女をモノにしたでしょうか???
永田聖一郎くんは天然紅色ほっぺが可愛いですね。
全体の感想としては、長い。
上演時間は途中休憩なし2時間15分を予定しております、は、長い。
初日から後半飽きちゃったのは相当だと思うし、初日は展開が分からなくて長く感じるけど2回目はあっという間だね、どころかさらに飽きてしまいました。
前作もまあ飽きたけど、今作は起承転結の「起承」までしか無いから間延びしてしまっているように感じました。
むしろ影山兄弟が描かれた今作は、前作よりは見応えがあったですが…
起承転結の「転結」を残して終わったので、次回作もあるのだろうなぁと思います。
てっきり千秋楽とかで発表するかと思っていました。
推しさんが出たら行かざる得ないから、兄弟喧嘩の続きはそこまで取っておこうっと。