それは、共鳴する命の輝き−ミラクル☆ステージ『サンリオ男子』
きっとどこにでもいる、でも、ここにしかいない、平凡で特別な男の子達の日常。
例えば、応援しているスポーツ選手だったり、好きなバンドだったり、想いを寄せる女の子だったり、まだ熟す前の若い魂が何に惹かれるのか探す時に、彼らはサンリオキャラクターを選んだ、ただそれだけのことです。
男“なのに”サンリオが好き、という問いはとっくにクリアした彼らの日常には、モテたいとかモテないとかキスとか童貞とか騒ぎながら、ごく自然にサンリオキャラクター達が溶け込んでいました。
お話は、関東と関西の高校生であるサンリオ男子10名と、その教師であるサンリオおじさん2名がショートストーリーで描かれたオムニバス形式です。
中野のテアトルBONBONかな??みたいな会話劇で紡ぐコメディと、ピューロランドのショーやパレードのような電飾やプロジェクションマッピングを使った派手な演出で、銀河劇場にみんなが輝くキラキラ空間が生まれていました。
とにかく可愛い男の子達を可愛いまま、まるで遊ばせているかのように描く亀田真二郎さんの脚本は、1人1人のキャラクターを輝かせます。
特に可愛いかったのは関西サンリオ男子!
オリジナルキャラクターの彼らは個性があちこちで暴発して、収拾がつかなくなる程暴れまくっていました。
この、幼稚園どころか動物園みたいな無秩序空間、どこかで観たぞ…と思っていたのですが、劇場を出て思い出しました。
プレゼント◆5*1だぁ!!!!!
懐かしさと愛おしさと、普通に面白すぎて死にそうになります。
KIRIMIちゃん.推しの若野ゆずが持つ愛はサイコパス過激派オタクで最高でした。
基本的に無邪気な笑顔や言動を見せているのに、時々意味分からないとこでブチ切れます。その勢いがおもしろくて、キレるたびに死ぬほど笑っていました。
暴れまくるゆずに静かに乗っかるのは、一見真面目そうな部長の柏木智博。
関西サンリオ男子達、そもそもはマンドリンギター部という設定もじわじわきます。
豊原夢ノ介は独自の方向へ独自の角度でズレていて、しかもそのまま突き進む恐ろしい子です。
京都弁も黒髪おかっぱも唐突に飛び出す演舞も、その“妙”さが定本楓馬くんによく似合っていました。
ボケ倒す3人に、時に乗っかり、時に弄られ、汗だくでツッコミを入れる羽倉虎男。
演じるのは、的確なツッコミと進行に定評のある北乃颯希くんです。
1人だけ消費エネルギー半端なさそうですが、散らかったボケをひとつひとつ拾っているのが愛だなぁと思います。
関東サンリオ男子は、基本のキャラクターは守りつつ、舞台ならではの自然な姿に進化を遂げていました。
長谷川康太を演じるのは北川尚弥くん。
顔が可愛い。
顔が可愛い!
この可愛い顔で怒涛のごとくコミカルな芝居をするのでおもしろかったです。
アニメで見た時は康太のキャラクターが少し苦手だったのですが、亀田さんが描く北川尚弥くんの康太は顔が可愛いし、ブラック康太もあくまでコミカルだし、顔が可愛いので、舞台の後はすっかり愛おしい男の子の1人になっていました。
共感を棄てたウザ可愛い長谷川~💛です。
水野祐はチャラい言動と、意外に常識人な側面のギャップでおもしろさが引き出されていました。
対人距離がめちゃくちゃ近いのが祐っぽいです。男子高校生のじゃれ合いを観ることができます。
生真面目なのかふざけているのか分からない、和合真一くんの源誠一郎は若干面倒くさい人でした。
サンリオ男子のテーマは「キラキラ」
男子達は、どうしたらキラキラできるか、という問いの答えとして「好きなことを好きと言うこと」を導き出しました。
もう男子のようにはしゃげないサンリオおじさん達。
大きな声で好きを叫んだり、堂々とキャラクターカフェに居ることができなくても、それぞれの生活に大好きなキャラクターを染み込ませていました。
きっとそれぞれのライフスタイルにあった、「好きの方法」があるのです。
サンリオ男子達の「好き」もそれぞれでした。
俊は「キティさん」呼びに拘ります。
推しのこと神格化しがちなのはオタクあるある~と思いながら見ていました。
同じくキティ推しの夢ノ介。
彼は「キティはん」呼びに拘っています。
同じキャラクターでも、思い入れも捉え方も違う、ひとりひとりが自分の「キティ」を愛することができるのです。
自信家の夢ノ介がサンリオ界の頂点に君臨するキティを推していることも興味深く思いました。
ゆずが大好きなKIRIMIちゃん.は、まだグッズ展開も少ないコアなキャラクターです。
これは憶測と偏見であって、決して実体験ではありませんが、オタクの少ない子を推すと自分が100人分応援しなきゃと思って過剰な言動に走りがちな気がします。
KIRIMIちゃん.推しのゆずの愛が暴走しているのはおもしろい傾向です。
主張の強いゆずに比べ、智はポチャッコを「思い入れがあるのは、」と控えめに表現します。
声の大きさが好きの大きさではありません。
きっと、智はポチャッコのこと、表面に現れている以上に好きだと思います。
虎男が挙げる好きなもので、クロミお嬢と阪神タイガースは同列に扱われていました。
「好き」は複数あったっていいのです。
祐にはピンクが似合います。
そしてメロちゃんはピンク派。
メロちゃんは最高にイケてるし、メロちゃんが好きな俺も最高にイケてる☆というスタンスです。
好きなものが好きな自分も好き、なんて、オタクとして理想の姿です。
誠一郎は、舞台では描かれていませんでしたが、シナモロールに会いに行って、触れ合いを求めるタイプだったと思います。
諒にとってリトルツインスターズは、内向的な彼と、会長を始めとする友人を繋ぐ大切な役割を果たしているように見えました。
ピューロランドで働き始めた康太。
康太はまだ、自分が自信を持って示せる「何か」を見つけられていません。
だからこそ他のサンリオ男子達やサンリオキャラクターがキラキラして見えるのでしょう。
ポムポムプリンはまだ不安定な彼の魂を支えるものであり、彼が進化を遂げる為の糧でもあります。
千秋楽の様子はニコニコ生放送で観ていました。
北川尚弥くんが挨拶で、「僕たちのことをいつまでも好きでいてください」と言っていたことが印象に残っています。
「これからも」はよく聞くけれど、「いつまでも」を使ってくれる俳優さんはなかなかいません。
自分が誰かにとっての「好き」の対象であることを自覚していて、その時どんな姿を見せるべきかよく分かっている。
なまじ生きている人間が対象なだけに、若手俳優への「好き」は、時々対象そのものから否定されるのではないかと不安になります。
そんな不安を吹き飛ばしてくれるような心強い言葉を、対象自身が発してくれる。
「僕もみなさんのこと大好きです」なんて、あざといかもしれないけれど、素敵な役者さんだなと感じました。
劇場には多様な「好き」を持った人々が集っていました。
サンリオ男子が好きな人も
その他のサンリオキャラクターが好きな人も
役者が好きな人も
演劇が好きな人も
今の時代、好きの気持ちを真っ向から否定されることなんて滅多に無いです(と信じています)。
それでも何かに熱中することは、怖さや後ろめたさが付き纏います。
2次元から出てきてくれないキャラクター、子供向けと思われがちなサンリオ、お金を払って”会いに行く“俳優、奇異なものを見る視線を恐れて、だんだん「好き」を言えなくなっていく自分がいました。
舞台の上の、普通で特別な男の子達が、実は全編を通して叫んでいた「好きなものは好き」という単純なメッセージ。
それは客席にいる、やっぱり普通で特別なひとりひとりに届けられます。
キラキラしていたのは、電飾やペンライトの光だけではありません。
舞台や客席、次元も超えて共鳴する「好き」の気持ち。
ひとつひとつの、命のキラキラでした。
因みに私はゆずくん推しです🐟