キイロイ

ホシノつくヒト

綿毛に包んで宝石箱へ #UWMAseries

少女漫画だと思っていたら仮面ライダーだった

タイドラマ「Until We Meet Again (原題:ด้ายแดงซีรีส์)」が先週最終回を迎えました。

 

原題の和訳は「赤い糸」

主人公は、大学の新入生Pharmと同じ大学の上級生Dean。そして、彼らの前世の記憶であるInKornです。

 

物語は、KornIn1組の恋人達が自害するところから始まります。

それぞれ父親の猛反対に遭いながらも、一所懸命に愛し合った2人。

死の前に、2人はある約束をしていました。

それは、生まれ変わったらお互いを探して必ず見つけ出すこと。

 

Pharmは入学した大学で水泳部のキャプテンDeanと出会います。

赤い糸に導かれるように出会い惹かれ合う2人。

2人はお互いがそれぞれの記憶に残る前世の恋人、InKornであることに気が付きます。

それぞれの生まれに隠された秘密。KornInの死。

まじめにゆっくり恋をしていた2人に、その「運命」が迫っていきます。

 

 

愛すべき透明で無垢なDeanPharmの恋の深いところで、過去や真実が濁流のように音を立てて流れます。

可愛らしい少女漫画を観ていたと思っていたのに、真実が暴かれていくにつれ味方だった「運命」が牙を剥く仮面ライダーみたいなストーリー展開になっていました。

それでも決して2人の関係性を崩さないラブストーリーのままで、17話分のドラマを与え続けたことが本作の魅力のひとつです。

 

過剰な肌の触れ合いは無くても、Pharmの涙を拭うDeanの指や、Deanの頬を包み込むPharmの手から、溢れるほどの2人の愛情を感じます。

そして、お互いを映した瞳の上で涙の層が厚くなっていく様子に、長い時間お互いを探し続けたInkornの姿を見るのです。

 

Inが叶えられなかった願いがPharmによって叶えられたことを知るたびに、希望のような絶望のような気分にさせられます。

 

特に印象的だったのが、Deanと迎えた朝にその寝顔を見るPharmの「Did Intouch have a chance to look at Korn like this?」に対して、夜明けを待たずに部屋を出るKornの背中をただ見詰めたInの表情。

Pharmのささやかな願いに対して、2つのエピソードに分けて出された“答え”の華麗さと残酷さは息苦しい程でした。

 

 

残されてしまった家族、そして誰よりInの、深い悲しみや苦しみはとても丁寧に描かれていました。

InKorn2人で自殺を選んだように見えますが、そこにはKornが先でInが後を追ったという順番があります。

それまで触れられなかったその事実が、現世のPharmの心情や行動、トラウマに繋がっていることに気づいた時は溜息が漏れる程でした。

 

決して台詞が語りすぎることはありません。

匂わせる程度の物語の繋がりや伏線回収に心地よさを感じる脚本です。(心地良さに相反して感情はヒリヒリとした混乱に置かれますが)

 

 

「赤い糸でつながれた運命の恋」を題材にしながら、「前世の記憶で恋に落ちたのであれば、現世の2人の意思は?」という誰も触れたくなかった問いに挑んでいたこともとても革新的に思います。

 

あれだけ甘い「運命」を描きながら、その「運命」が2人の「枷」となり、それをまた2人が乗り越えるところまでを描き切った物語でした。

 

 

天才と変態

画面が割れるような美しい絵を撮るのはNew監督です。

女の子っぽさとは別の次元から生じている、男の子の可愛らしさや美しさを本能的に分かっている人だと感じます。

髪の毛も睫毛も体毛も涙も汗も、ありのまま映し出してそれを美しさに変換してしまう。

ああ、これは本物の変態が撮った絵だなと何度も思いました。

 

 

今作で特に目を惹かれたのが、さり気なく、でもあざとく置かれた光たちです。

朝の柔らかい光、紅い夕焼け、他愛もない昼間の明るさ、ロマンティックに灯る照明、そして陰。

 

光に当てられた人物の心情を表していたり、彼らの置かれた状況を匂わせていたり、光の演出が舞台的だなと感じました。

 

過度な説明を嫌う作品だったので、些細な演出や芝居を目を凝らして観ていました。

ドラマでこれだけ集中して思考した作品は初めてです。

 

 

PharmDeanを起こす朝、抱き合って転がった先で2人の顔は朝陽に照らされて、溜息が出るほど美しい光景でした。

 

PharmDeanと初めて“ただ寝るだけではない”夜を過ごす前。

チカチカしたテレビの光に当てられピンク、青、白、と色を変えるPharmの表情は、その緊張や興奮を表しているようで可愛らしい。

 

初めてAnに会いに行く日、不安がるPharmを落ち着かせるようにDeanが話しかけます。

Deanの顔は夕陽に照らされていますが、向かい合うPharmの顔には濃い陰が差していました。

 

Sanの家でPharmが地下の図書室へ向かう時、明るい昼間の光を背にPharmは暗闇の中へ消えていきます。それは、”Pharm”が消えてしまうことを感じさせる怖さがありました。

実際この後、PharmInに取り憑かれたように暗闇を彷徨い、Deanが助け出すまで光の中に戻ることはありませんでした。

 

 

DeanPharmは浴びた光が強い分、陰が色濃く現れます。

それすら、彼らが強い幸福の中にいる一方、逃れられない大きな過去も抱えている間接的な表現に感じられて堪らないのです。

 

 

少年たち

監督の拘りを反射して、目が潰れる程の透き通った光を放つのはPharm役のFluke

とにかく可愛い。庇護欲の擬人化みたいな男の子です。

 

Flukeは、純朴な青少年の可愛らしさをベースに実に様々な表情を使い分けて芝居をしています。

特に友人たちと一緒にいる時の顔とDeanといる時の顔の違いは、そのさりげなさも含めてプロの仕業だなと感嘆してしまいました。

 

PharmInは度々重なり混ざり合います。

そんな時FlukeInの表情をするので、彼の容姿を超えてそこにInがいるように錯覚させました。

 

その最高潮が最終話の“あの部屋”です。

InPharmを制圧してしまった混乱と恐怖を、ボルテージを徐々に上げながら圧倒的な芝居で見せてきました。

本当に凄い芝居を見たなという興奮が残っています。

 

 

Dean役のOhmは怪しい笑みと相反して無垢な瞳が印象的な役者です。

Tricky”な笑みを浮かべた口元に対して、困ったPharmを見つめる瞳は淀みなく澄んでいて、そのギャップに笑ってしまいます。

そしてPharmに対する「めちゃくちゃ可愛いな」が隠し切れないニヤけ顔。

登場時はクールな先輩だったのが早々に崩れ果てていますが、Ohmの素な怪しさが滲み出ているのは実写ドラマの面白さだなと感じます。

 

 

Intouch役を演じるのは、“かわいい”のプロcooheartことEarthです。

あざとく可愛らしく、Kornの前では敢えて子供のように振る舞います。悪戯っぽく揶揄うようにKornを覗き込む笑顔は、流石プロの可愛いと唸るしかありません。

憧れの先輩Kornへ恋するInの姿はとても健気です。

一方、Kornの背中に注がれる表情には、強い覚悟と深い慈愛が見えます。

 

Inがただ単純に無邪気な訳ではなく、その奥に彼の賢さや意志の強さが隠されている事を感じさせるEarthの芝居。

彼以外のInは考えられません。

 

 

Korn役のKaoは顔面がお強過ぎて、私の辞書から「顔が良い」以外の語彙は奪われてしまいました。

国宝級イケメンとしてバズってTGCでランウェイ歩くのいつですか??まだですか???

 

肉体美も群を抜いていて、半袖姿や上裸を披露するとその鍛え上げられた肉体に驚かされます。

劇中では制服や長袖シャツ姿が多いので目立ちませんが、色白で優しいハンサムさから想像できる5倍は筋肉です。(????)

 

なんかもう格好良すぎて、KornInならまだしもKaoEarthでいちゃいちゃしている所を見ると、Earthが羨ましいを通り越して恨めしいですね!

 

 

しかし個人的No.1リア恋枠は銀髪のBestくん。

爆イケ。

登場の仕方がささやか過ぎて役名が思い出せないのですが、Pharmが所属する料理部の穏やかな先輩役です。

Bestくんはもう暗髪に戻ってしまっているので、狐につままれたような気分でIGを開く日々を過ごしています。

銀髪の和かなあの先輩にもう一度会いたいな

 

 

We Meet Again ,and then...

ラストシーン、2人はPharmのベッドの中、PharmDeanの腕に包まれます。

音楽を流すスピーカー、部屋に覆いかかる光。

ep10KornInが同じようにInのベッドの上で過ごした時を思い起こさせます。

 

 

“あの日”、Kornに置いていかれてしまったIn

 

対話が出来ずに死んでしまったKornInの為に2人が出会ったなら、自分とDeanの恋は本当に“自分たちのもの”なのか。

彼らを結んだ「運命」を、赤い糸をDeanが切ってしまう恐怖に魘されていたPharm

 

 

Deanは”Chatphokin”の姓を選びました。

それは、彼がKornの罪を背負ったままPharmを愛し続けるという決意です。

Kornの強い後悔が導いたDeanの答えが、Pharmを、そしてInを一生幸せにしてくれると信じさせてくれます。

 

 

InKornは“あの部屋”を出ました。

全ての思い出の最終地点として彼らを苦しめたあの部屋はPharmの部屋と繋がって、初めて淡い光が差していました。

 

消せない過去も逃れられない運命も抱えて、でも“彼らの部屋”はもう、優しい光に柔らかく包まれています。

 

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