キイロイ

星乃勇太と宇宙人アイドル

「あんさんぶるスターズ On Stage Take your marks!」2017年1月11日マチネ

演劇を見たいわたしとキャラクターに会いたいわたしが存在して、相反する感情が渦巻いている。
 演劇としては、この内容でよく2時間半保たせたなぁと。もともとあんスタ自体が好きなわたしとしては、メインストーリー4章、5章の芸能界や大人になることへの闇に目を向けた物語はとても好きだった(日日日先生作品の特徴なのか、若干モノローグが諄いと感じるけれど。)あんスタという作品の根幹にいる「転校生」という存在をストーリーから概念ごと削除しているのでそのまま上演出来るとは思わないが、起承転結で作られたもともとのストーリーがあるのだからそれなりの物語にはなるはずだと思う。
もちろん良い場面はたくさんある。特にスバルが北斗を呼び止めるために言葉を荒げる場面はとても好きだし、ステでも小澤廉くんと山本一慶の熱演が涙を誘っていた。しかし原作場面の再現があれば良いわけではない。どんなに良い芝居をしても物語を「起」「承」までしか上演せずに舞台の幕が閉じてしまっては舞台演劇として成り立っているとは思えない。せっかく良い場面だったのに、その芝居はこの演劇の中で何の意味もないものになってしまうように思えて残念だった。
メインストーリーの内容はほぼ1幕で終わってしまって、2幕はオリジナル(というほど練られていない)シーンと不自然に入れられたライブシーン。防音練習室で旧トリスタメンバーが入ったユニットの練習が行われて、正規メンバーが旧トリスタに「見学してろ」と言ってからのライブという流れが2度もあって流石に芸がなさ過ぎると思った。だいたい、ライブ練習に向かってどういうスタンスでどんな顔してうちわやサイリウムを振ればいいのだろう…
なまじ集客が見込めるせいで、舞台化する際に必須であるはずの物語世界の「再構築」という作業をおざなりにしているように思えた。残念。
キャラクターに関しては、初演組は安定していたし、今回はユニット単位で出演しているのでそれぞれの個性が色濃く出ていて良かった。
流星隊は前説からわちゃわちゃ感が楽しい。ストーリーに絡むようで全く関係のない立ち位置なのでとっても能天気。5人とも自由に動けるキャラクターのせいで色々なとこでごちゃごちゃやっているのも賑やか。これでそれぞれが慣れてきてもっと自由に動くようになったら騒がしいだろうなぁと今後が楽しみになった。今回1番のびのび演じていたのは仙石忍役の深澤大河くん。特に翠くんを励ましたり端でこそこそ動いているのが可愛かった。
fineは顔面偏差値が高い。特に英智役の前山くんは登場シーンだけで皇帝陛下だ…と分かるオーラがあった。綺麗なお顔で優しく微笑んで立ち姿も美しい。声は澄んでいて綺麗。何よりその無邪気さと滲む毒々しさ。正直今までゲームの立ち絵だけではここまで英智さまの魅力を感じ取ることはできなかった。fineの中でも群を抜いているこの天祥院英智に対抗できるのは、やはり小澤廉が演じる明星スバルだけかもしれない。
我らが赤澤遼太郎演じる大神晃牙。初演はかなり贔屓目で見ても褒めきれない演技だったけれど、さすが成長目覚ましい。とくに遊木真に嬉しそうに声をかける姿は晃牙くんの可愛さが爆発していた。ゲームの晃牙くんは喧嘩っ早さと内に秘める優しさという印象が強いけれど、赤澤遼太郎の晃牙くんはひたすら素直でかなりお馬鹿な仔犬といったところ。
前作に引き続き山中兄弟のひなたゆうたや樋口裕太くん演じる神崎も、ゲームの印象と少しくらい外れても、それ以上のキャラクターの魅力を生み出していた。2次元のキャラクターが3次元に、張りぼてではなくきちんと肉を持って立ち上がった感じがしてわたしは好きだ。

回数を重ねるごとに、役者の作るキャラクターは魅力を増す。その魅力を、物語の中で存分に堪能させて欲しい。ストーリーをライブのおまけにしないで、彼らの生き様を見届けさせて欲しい。
好きだから、わたしはまだ少しだけ次回作に期待と希望を持って待っていようと思います。